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南極観測 絶え間なく
第49次 夏隊から越冬隊へ

 短い南極の夏。この約2カ月間、第49次南極地域観測隊(伊村智隊長)の隊員たちは、観測・設営に数々の新たな足跡を残した。15日、夏隊員を乗せた観測船「しらせ」は昭和基地を離れた。そして、それと同時に29人の越冬隊員(牛尾収輝越冬隊長)による南極の越冬生活がスタートした。今日もまた、地球の未来に向け、極地での観測は絶え間なく続く。 (文・写真、報道部・鹿糠敏和)


沈む太陽
南極S16地点に沈む太陽。太陽の沈まない夏が終わり、
間もなく太陽が昇らない「極夜」となる=2月5日
光の柱
日没時に出現した光柱。大気中を漂う氷晶が反射することで発生する=1月31日、昭和基地で撮影
風雪の跡
長年の風雪によりハチの巣状に風化した岩。
南極の沿岸路岩域ではあちこちに見られる=ラングホブデ袋浦
紫の空に月
日没で紫色に染まった空に昇る月。氷山とのコントラストが美しい=1月24日未明、西オングル島で撮影
青い湖底
湖底(水深約9メートル)から水面を臨む。澄み切った青の世界が美しい=2月8日、スカルブスネスなまず池(水中カメラ使用)
高 峰
一面が白の世界の南極大陸にそびえ立つ高峰ボツンヌーテン。
1次隊が登頂した中央峰は標高1480メートル=観測船「しらせ」のヘリより撮影



雪氷の中たくましく
ウェッデルアザラシ
ユキドリ
アデリーペンギンの親子
コウテイペンギン
観測新時代
  進む国際協力 航空機利用も

別動隊員らを輸送するため、昭和基地近くの
内陸S17地点に降り立った国際共同運航の航空機

 現行しらせの引退航海と新船就航対応、航空機を利用した別動隊、国際協力による観測推進など、第49次南極地域観測隊(伊村智隊長)は南極観測の次代を担う活動を展開した。地球環境への意識が高まる現状で、これからの南極観測は、効率的で時代に即した体制づくりが求められる。

2カ月弱の夏作業で完成した道路(写真上=しらせヘリより撮影)、コンテナヤード(同中)、金属タンク関連工事(同下=しらせヘリより撮影)
 どこの国の領土でもない南極では、観測推進のため国際的な協力関係が培われている。49次隊はスウェーデンと共同で内陸調査旅行を実施した。日本隊だけでは実現できなかった未調査地域の観測を進めた。一国では行ける範囲が限られてしまうため、今回の手法は新たな可能性を広げた。

 セールロンダーネ山地を舞台に活動した別動隊は、建設中のベルギー新基地に立ち寄った。スノーモービルを置き、来年以降も同山地での調査を協力して行うことにした。

 地球の未来のためという共通目標で、国境もなく各国が研究観測で力を合わせる南極。領有権を主張する国があるのも事実だが、今後も国際的な協力関係は重要性を増していくだろう。

 両別動隊は航空機を利用したことが特徴だ。セールロンダーネ隊は食料をすべてフリーズドライ食品で持ち込むなど、「航空機利用モデル」を示した。

 もちろん内陸旅行や昭和基地での観測・設営には船での大規模輸送が欠かせない。ただ、人員輸送に関しては短期間で移動できる航空機利用は合理的といえる。今後、国際的な研究観測の可能性を広げるためにも、船と航空機のバランスのいい運用も視野に入れる必要がある。

 伊村隊長は「人の動きとしての国際協力が進む流れにある。昭和基地に来て観測したい外国人もおり、航空機を利用した訪問が増える日は遠くないだろう」と予想する。

クリーンアップ4カ年
  残置物900トン回収 ごみ減量に本腰

 第49次南極地域観測隊(伊村智隊長)は連日、南極・昭和基地で設営作業に取り組んでいる。作業は2009年就航予定の新船に対応した工事が多い。南極の夏は短いことから急ピッチの作業となっている。

東オングル島内の一斉清掃で集まったごみ。南極に持ち込んだ物資の廃棄物対策も欠かせない=2月7日、昭和基地
 「地球環境センサー」としての役割を担う南極・昭和基地では、廃棄物処理も大切な業務だ。残置廃棄物の持ち帰りなど対策は進んでいるが、さらにごみを減らす努力が求められている。

 45−49次隊が残置廃棄物持ち帰りや一斉清掃などをうたう「クリーンアップ4カ年」を実施している。4年間で約900トンを持ち帰り、過去に野積みになっていた東オングル島内の廃棄物は格段に減った。

 しかし、減ったとはいえ、まだごみは散在している。この2月に隊員としらせ乗員で2日間実施した島内一斉清掃では、計2・7トンのごみが集まった。過去に野焼きをしていた場所からは大量のくぎや金属、プラスチックなどが収集された。4カ年キャンペーンのあとも対策は引き続き行う方針だ。

 49次隊環境保全担当の赤田幸久隊員(40)=有明登山案内人組合、長野県出身=は「持ち込む物資のこん包をシンプルにするなど基本的なことを徹底できれば、ごみは減らせる。廃棄物処理を後次隊に残さないよう取り組みたい」と強調する。

牛尾越冬隊長に聞く
 29人で基地切り盛り 新輸送体制も念頭に

 第49次越冬隊は例年より10人程度少ない29人で編成された。厳しい環境の中、昭和基地への輸送体制の変更などの課題にどう対処するのか、牛尾収輝越冬隊長=国立極地研究所=に聞いた。

(聞き手は報道部・鹿糠敏和)

 −今回の越冬計画の特徴は。

 「まず国際極年(2007−8年)に関連した多岐にわたる研究観測がある。内陸や沿岸域における観測旅行も計画しているが、やはり昭和基地での観測が中心となる。地球の実態を調べるためには、継続的な観測が大切だ」

 「来年の輸送が『しらせ』ではなく豪船になることも今までにないことだ。2週間という短い期間で、50次隊へ引き継がなければならない。51次隊からは新船となるが、それらへの対応も頭に入れ行動していきたい」

 −例年より小規模な越冬隊となるが。

 「30人を切る越冬隊は約40年ぶり。そのころと比べれば基地の規模は拡大しており、個人にかかる負担も大きくなる。各人に与えられた仕事だけではなく、他部門への支援など基地全体を考えた行動がこれまで以上に求められる」

 −南極の厳しい自然環境下で暮らすための安全対策は。

 「もちろん安全対策訓練を行うが、道具やリーダーに頼るのではなく、自分の身は自分で守る意識が大事だ。危険な場所や状況の情報共有も図っていく」

 −南極で越冬観測を継続する意義を聞きたい。

 「地球の変化をとらえるためには、自然環境のデータを継続して蓄積する必要がある。航空機や船を使う夏の短期間の大規模観測を行うにしても、越冬隊の準備や観測が不可欠だ。現場で検証する作業は重要なことで、国際社会に貢献するという意義も大きい」

【写真=「地球の実態を調べるためには継続的な観測が大切」と語る第49次南極地域観測隊の牛尾収輝越冬隊長】
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