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'07
  統一選

 岩手のかじ取り役を担う知事選は3月22日の告示まで約1カ月に迫った。立候補を表明しているのは五十音順に盛岡市の会社役員芦名鉄雄氏(61)、いわて労連前議長で共産党推薦の菅野恒信氏(61)、民主党県連代表で岩手1区選出の衆院議員達増拓也氏(42)、前滝沢村長で自民党推薦の柳村純一氏(56)。いずれも無所属新人4人による争いが濃厚だ。財政再建、地域医療、産業振興などの課題が山積する中、地方の置かれた難しい時代をいかに切り開いていくのか。知事選まで秒読みに入った立候補予定者の動向と課題を追った。


知事選

<2007年2月14日>

「国」への姿勢問う 達増、柳村氏 立場鮮明に

 「自民党の知人から、達増さんは国とのパイプがないといわれる。どう対応するのですか」



初の街頭演説で「市町村を支えるのが県の役割だ」と訴える柳村純一氏=11日、滝沢村内


「危機を希望に変えたい」との思いを込めて握手する達増拓也氏=11日、盛岡市内

 12日夕。県議選一関選挙区に民主党公認で立候補を予定する新人候補のミニ集会が一関市内で開かれ、同席した達増氏に出席者から質問が寄せられた。

 「行政は、あくまで公正中立でなくてはならない。民主党だから、国の予算が付かないということはありません」

 達増氏の説明に新人候補も「今、行政に求められるのは国とのパイプより、住民の皆さんとのパイプです」と続けた。

 昨年8月に出馬表明した達増氏は、支持者回りや街頭演説を続け、県内回りは5巡目に突入。約3万人に会ったという。

 「県内を歩き、経済や教育、医療・福祉など、将来への不安が増していることを身にしみて感じた」。これまでの衆院岩手1区の戦いと同様、「草の根」が政治活動の基本だ。

 無所属で知事選に臨むとはいえ、限りなく「民主色」が強い達増氏。小泉政権の負の遺産といわれる「格差社会」に有権者の目を意識し、「『危機を希望に変える』を戦いのキーワードにしたい」。視線の先には同党が掲げる政権交代がある。

 達増氏が代表を務める民主党県連は、県議選で過半数獲得を目指して全選挙区に公認・推薦候補を擁立。達増氏との連動効果で組織戦を展開する。

◇        ◇

 「ねじれた国との関係を修復します」。13日に12項目の公約の柱を発表した柳村氏は、公約の一つに政権与党との関係修復を盛り込んだ。

 民主党が一大勢力を占める本県の政治状況を危(き)惧(ぐ)。「市町村主体の行政を実現するには国のさまざまなメニュー(事業)が必要。中央と岩手の大きなねじれが壁になっている」と語気を強めた。

 県政界と政府・与党との関係に危機感を抱く県内首長有志に推される形で1月に出馬表明。今月6日には県町村会長の稲葉暉一戸町長が代表者となり、柳村氏支援のための政治団体「新しい岩手を創造する会」の設立を県選管に届け出た。

 賛同者には熊坂義裕宮古市長や民部田幾夫岩手町長らが名を連ねる。「国とスムースに連携できる人でないと知事は務まらない。市町村長はみな不安を持っている」(熊坂市長)。

 こうした首長らの危機感を背景に幅広く県民の支持を得たいと、「県民党」的立場を目指す柳村氏。しかし、組織力を持つ達増氏に対抗するには、自民党の支持基盤に頼らざるを得ない事情ものぞく。

 その自民党県連は柳村氏の出馬表明を受けいち早く推薦を決定。独自候補の擁立が難航を極めただけに、一気に連携の手を握った。玉沢徳一郎県連会長も「非民主の連携の下で広範な戦いを進めていきたい」と「打倒民主」を掲げる。

 国との関係をめぐり、主張の違いを鮮明にする達増、柳村両氏。地方自治の今後のあり方にも影響を与えかねない双方の戦いは、民主、自民の勢力争いとも重なり、激しさを増している。



知事選

<2007年2月15日>

民の目で県政刷新 菅野、芦名氏 浸透へ訴え

 13日。いわて労連前議長で共産党推薦の菅野恒信氏(61)は出身地の一関市内で初の街頭演説を行った。



「民間の感覚を生かし、県が抱える借金返済に取り組みたい」と語る芦名鉄雄氏=矢巾町内


「医療、福祉を守り、憲法を暮らしに生かす県政をつくる」と訴える菅野恒信氏=一関市内

 「次の知事選は、大型事業や県競馬組合に税金を使う増田県政を引き継ぐか、その流れを変えるかが最大の争点になる」

 傍らには県議選一関選挙区に立候補予定の同党公認候補の姿も。ともに「県民が主人公の県政に変えられるかが問われている」と訴えた。

 菅野氏は、共産党県委員会やいわて労連などで構成する革新系の「明るい民主県政をつくる会」(渥美健三代表)が擁立。▽雇用の拡大▽命と健康を守る▽30人学級の実現−などを掲げ、増田県政が進める県競馬組合への巨額融資や簗川ダム建設を見直し、医療や福祉に重点を置く「県政革新」を目指す。

 2月に入り「明るい民主県政をつくる胆江の会」と「一関の会」を設立した。告示までに15以上の地域の会をつくり、共産党公認候補が出馬する県議選一関、奥州、盛岡、岩手各選挙区との連動を狙う。

 共産党県委員会の菅原則勝委員長は「県民とともに県政をつくり上げることが大事」とし、幅広い浸透を目標とする。

◇        ◇

 会社役員芦名鉄雄氏(61)は、各党への推薦要請は行わず、独自の戦いを進める考えだ。「民間の経営感覚を取り入れた行政」を掲げ、行財政改革を訴える。

 ▽岩手競馬を継続させて民間企業に売却▽廃棄物の80%リサイクル実現と二酸化炭素削減▽職員の仕事は実績評価▽知事の退職金、ボーナス返上−などを訴える。

 分かりやすい公約を掲げ、無党派層や女性有権者への浸透を目指す。「県が抱える借金返済や経済活性化に、民間感覚で取り組みたい」と語る。

◇        ◇

 知事選候補を擁立しない公明、社民両党の動向も今後、注目される。

 公明党県本部(小野寺好代表)は、前滝沢村長の柳村純一氏(56)から1月に推薦要請を受けたが、対応は今のところ白紙状態だ。

 友党の自民党県連は早々と柳村氏の推薦を決定したが、国政選挙での「自公選挙協力」が実行されていないことなどから、足並みはそろっていない。小野寺代表は「党員や支持者の考えを聞きながら慎重に判断したい」としている。

 社民党県連合(小原宣良代表)も柳村氏から推薦要請を受けたが、あくまでもマニフェスト(政策公約)で判断する姿勢だ。小原代表は「知事選対応は、各候補者がどのようなマニフェストを示すか見てから決める。具体的な検討は3月になってからだろう」と話す。



知事選

<2007年2月16日>

具体的政策望む声 「苦い薬」の提示も必要

 「マニフェストはウイッシュ・リスト(おねだり集)ではない。『苦い薬』も提示しなければならず、そういう点では問題意識が希薄だった」

マニフェスト検証大会で増田知事らの話を聞く参加者。県政のかじ取りが難しい時代だけに、候補者が訴える政策の重要性は高まる

 9日夜に盛岡市内で開かれた「県知事マニフェスト検証大会」

 県立大総合政策学部の斎藤俊明教授は、増田知事が2003年の知事選で示したマニフェスト(政策公約)を「66点」と評価。県競馬組合の経営問題など「負の課題」に触れなかった点を指摘し、有権者にとって「苦い薬」も示すよう求めた。

 知事選は、3月22日の告示まで1カ月余に迫ったが、4人の立候補予定者は具体的な政策やマニフェストを示すまでには至っていない。

 民主党県連代表で岩手1区選出の衆院議員達増拓也氏(42)は昨年8月▽知事退職手当の廃止▽知事任期は原則2期8年、長くても3期12年−とする公約を示し、マニフェストについて「(3月開催予定の)公開討論会までに間に合うよう用意したい」と語る。

 前滝沢村長で自民党推薦の柳村純一氏(56)は今月13日に県競馬組合の廃止や医師確保予算の大幅増額など12項目の公約を発表した。

 しかし、競馬を廃止した場合の雇用問題への対応、予算を大幅増額する際の財源の裏付けなどは明確でなく「後で示すよう努力する」と述べるにとどめている。

 いわて労連前議長で共産党推薦の菅野恒信氏(61)は▽雇用の拡大▽命と健康を守る▽30人学級の実現▽競馬組合への税金投入見直し−などを掲げ、来週中にマニフェストを発表する予定。

 盛岡市の会社役員芦名鉄雄氏(61)は▽岩手競馬を継続させて民間企業に売却▽廃棄物の80%リサイクル実現と二酸化炭素削減▽知事の退職金、ボーナス返上−などを訴える。

 マニフェスト検証大会に参加した花巻市藤沢町の八重樫新治さん(67)は「『豊かな岩手にする』など、美しい言葉だけでは、公約に差はない。どこから課題に手を付けるのか具体的に示してもらいたい」と注文。

 検証大会で公表された県民アンケート結果によると、今後、取り組んでほしい課題として多くの県民が1兆4000億円の県債(借金)残高を抱えた「財政問題」や「医師不足問題」「雇用対策」などを挙げた。

 盛岡市長橋町の薬剤師安田さおりさん(36)は「競馬問題と医師不足が深刻。立候補を予定する4人にはぜひ、具体的な対応を示してもらいたい」と期待する。

 人口減少と財政危機の中で、山積する県政課題にどう取り組むか。場合によっては県民に「痛み」を求めることも必要だろう。そのためにも立候補予定者には明確な政策の提示を求めたい。

(統一地方選取材班)



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